今から300年前、尾形光琳が亡くなった正徳六年であり享保元年となる1716年、近世画壇を代表する与謝蕪村、伊藤若冲の両巨頭がこの世に生をうけました。若冲は錦の青物屋で、蕪村は摂津の農家の出身。蕪村は、江戸や丹後など、居を転々としたあと、四十歳前半に京都に移り住み、68歳で生涯をとじるまで、烏丸仏光寺あたりに住まいしたといわれています。若冲と蕪村は、およそ四半世紀の間、数百メートルの距離に居住していましたが、両者の交流の痕跡を見出すことはできません。
しかし、この二人の画風が確立する時代、室町中立売にいた儒者・皆川淇園には、蕪村と若冲のそれぞれと交歓があったことが知られています。この三人が活躍した時代は、京菓子の成立時期とも重なっており、現在の京都文化の重要な部分が築かれた時代ということもできるかと思います。そのような意味で、蕪村と若冲という、二人の巨匠の作品をモチーフとした菓子展を、皆川淇園の弘道館において開催することは、大変有意義なことと考えております。
江戸時代の学問所・弘道館址の学問・芸術サロン 有斐斎弘道館は、今年も京菓子展を開催いたします。
2016年のテーマは「蕪村と若冲」。
俳画の創始者とも言われる与謝蕪村は、江戸俳諧中興の祖と称されています。奇想の画家ともいわれる伊藤若冲は、写実と想像を巧みに融合させた画風で、近年注目を浴びています。ともに生誕300年を迎える二人の芸術家は、それぞれ、皆川淇園との交流が知られています。そしてこの時代、京の地で「京菓子」が成立するのです。
温故知新、300年前に思いを馳せながら、
「蕪村と若冲」をテーマにした新たな京菓子作品を募集いたします。
京菓子デザイン部門:デザイン画のみの応募。入選デザイン画は、菓子職人により実作され展示。
茶席菓子実作部門:茶席菓子(いわゆる上生菓子)を実作される方を対象。試作作品の写真にて審査。展示作品は応募者が用意。
工芸菓子実作部門:工芸菓子・その他(干菓子等も含む)を実作される方を対象。試作作品の写真にて審査。展示作品は応募者が用意。
・蕪村と若冲の特徴をどう捉えるのか、京菓子の特性をどのように活かすかについての視点がある
・「銘」(お菓子の名前)の重要性を考え、菓子のデザインと引き立て合うような作品である
・「食べる」ことを考えた作品である(特にデザイン部門)
・冷泉為人(公益財団法人 冷泉家時雨亭文庫 理事長)
・廣瀬千紗子(同志社女子大学 特任教授)
・土佐尚子(アーティスト、京都大学教授)
・杉本節子(料理研究家、公益財団法人 奈良屋記念杉本家保存会 常任理事兼事務局長)
・濱崎加奈子(専修大学准教授、有斐斎 弘道館 館長)