作:山中 素子
講評:紅葉と流水のコントラストが美しく、小川の流れを表現したフォルムが際立っている。餡を下から上に巻く形状のものは多く見られるが、この菓子の場合はそれぞれの餡の色を変化させるなど、菓子としての可能性も拓いている。形状、色彩に独創性があり、京菓子としてはやや造形が勝ちすぎているきらいはあるが、斬新な作品であるとの評価を得た。
作:幸田 久仁子
講評:展覧会のタイトルともなっている「手のひらの自然」からさらに広がった「手のひらの宇宙」ともいうべき作品で、大賞と同じく斬新な色彩、形状である。京菓子からは少し離れているようにも感じるが、万葉と結んでみることで独創性が高まっており、新しい京菓子らしさを表現している。
作:高井 弓
講評:さわらびが伸びていく様子がよく表れており、銘の通り湧き立つ春を感じる。やわらかな姿に春を感じる色合いも美しい。京菓子の中でも千年の歴史をもつ亀屋清永の代表的銘菓「清浄歓喜団」を彷彿とさせるフォルムも万葉の時代との呼応をみせており、京菓子らしさを保ちつつもオリジナリティを感じさせると高く評価された。
作:神山 典之
講評:和菓子には珍しく、面白く、かつ美しい形である。新春の華やかな心の芽生えをうまく造形表現として昇華させている。技術的にも高度であり、食味も餡にさわやかさを感じさせる不思議な味で、想像力を刺激する。
作:幾世橋 陽子
講評:すべて”白”だけで表現したところに大胆さがある。沸き立つ白雲が細かく、個性的な形状となっており、日のなかに影ができて美しい立体感が感じられる。ただ、形状と銘との関わりがわかりにくく、もっと抽象化してよりシンプルにするなどの工夫があるとより良くなる予感があり、今後への期待を込めて今回は受賞作品とした。
作:中根 友之
講評:わらびの芽が横に伸びている動きが楽しく、萌え出ずる春の表現がわかりやすくさわやかな京菓子らしい作品である。銘と菓子のデザインとの関係性もぴったりとくる。とくに新しさは感じられないが、応募作品のなかでよく整っていると総合的に評価できる。
作:片岡 聖子
講評:実作部門に、趣向を凝らした愉快な意匠の作品が多く並ぶ中、最初に目をひいた作品。ただ美しく、口にしたいと思った。が実際にいただいたが、味も食感も、とてもバランスがよい。
作:中丸 剛志
講評:柿本人麻呂が詠んだ、天の海に雲の波が立ち、月の舟が星の林に漕ぎ入る様子がシンプルに美しく表現されています。金箔の星や、ほのかに透けてみえる餡など、濃やかに作られています。人麻呂が見た月も、私たちが見る月も同じだと思うと、『万葉集』も人麻呂も身近に感じられ、作品を通して、色々と思い巡らせることができました。羊羹で作られており、頂きやすく、美味しいのも魅力です。
作:一方隅 冴
講評:この作品は、デザインにとって重要な、伝えたい想いをシンプルかつ強いメッセージで表現することができています。「黒髪から白髪に変わっていく…」という時の流れの切なさを、抽象的かつ斬新な手法でデザインされ、「見たことが無い」と思わせてくれた点を評価いたしました。
作:一方隅 冴
講評:万葉長歌の中から、世のうつろい、無常観を漂わせる一節から想を得て、和菓子に結晶させた知と技にエールを送る。墨流しの様な菓子は、今まで見たことが無く、チャレンジングである。